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 文科省は7月31日、18年度「全国学力・学習状況調査」の結果を公表した。今年度「調査」は、小学6年・中学3年を対象にして毎年実施の国語、算数・数学に3年ぶりに理科を加えたものである。全国の状況について、「地域差が縮小し、改善傾向にある一方で応用力に課題がある」など例年と何ら変わらない分析を行った。

 「悉皆」による「調査」は今年度で11回目となったが、この間、各都道府県教委は順位の変動に一喜一憂し、その結果、序列化や過度な競争に拍車がかかり、学校現場は「学力向上」の名の下で、過去問題のくり返しやなりふり構わない事前対策と、学習規律の徹底など画一的な「授業改善」を強いられてきた。これにより、地域や子どもの実態に即した創造的な教育が蔑ろにされるなど学びが矮小化され、子どもたちは競争と管理の中で劣等感を植えつけられ学ぶ意欲を削がれるなど本質的な学びを阻害されてきた。さらに、他県では点数のとれない子どもを排除するなど、子どもの尊厳を傷つけられる事態まで惹起し、断じて容認できない。

 しかし、「調査」実施の是非や検証は行われず、表面的・短絡的な寸評に毎年約50億円が費やされ、今年度は3年ぶりの理科の実施とともに「夏期休業期間等も活用した教育指導の一層の改善・充実を図る」として、公表時期が例年の8月末から約1カ月前倒しされた。超勤・多忙化が常態化している中で、さらに「夏休み中の結果分析と対策の構築」「休み明けからの改善方策の実施」を求めることは、学校現場を更に追い詰めるものである。

 道教委も同日、文科省の公表に追随し「平成30年度 全国学力・学習状況調査の結果のポイント」を公表した。その中で、「中学校国語Aと中学校理科で全国平均正答率を上回り、他の教科では全国平均に達していないものの、小学校国語A 、中学校数学Bで差が縮まっている」「小学校・中学校共に正答数の少ない児童生徒の割合が減少した」など改善の傾向が見られるとしてとりくみの成果を強調し、「授業改善と望ましい生活習慣の確立に向けた取組を更に進める」とした。さらには、「教員の指導力強化などで効果を上げている学校の実践を周辺校にも広め、道内全体の底上げにつなげる」などとした。

 しかし、こうした道教委のすすめる「授業改善」「指導力強化」などは、子ども・地域の実態を一切顧みない画一的な手法の押しつけであり、子どもの思いや願いを置き去りにした独善的な授業・指導に陥りかねないものである。今回の調査結果において、教員が「褒める指導をよく行った」という割合が大きく伸びたのに対し、子どもが「良いところを認めてくれている」と回答した割合が減少するなど相互の認識の乖離が浮き彫りになった。目の前の子どもに寄り添わない管理統制された指導の押しつけは、子どもたちが楽しく学ぶことに結びつかないことは明らかである。

 学校現場では「点数」を上げるために、「学習規律」や統一的な授業方法の押しつけ、膨大な宿題、放課後や長期休業中の補習の強制、習熟度別指導の強要、過剰な授業時数確保など子どもたちを追い詰める方策ばかりが優先されている。また、教職員は「チャレンジテスト」実施・採点・報告、「調査」実施直後の解答用紙コピー・自校採点などに奔走させられ、教材研究や授業準備の時間が奪われるなど超勤・多忙化に拍車をかけ、本末転倒の状況に疲弊しきっている。

 道教委は、「全国学力調査」「調査結果の公表」や、それにもとづく「学力向上策」の押しつけを即刻中止し、各学校の自主的・創造的な教育活動を尊重するとともに、「子どもの貧困」解消・「教育格差」是正、さらに「過労死レベル」に達している教職員の勤務実態を解消するための業務削減と定数改善、「給特法」廃止をはじめとした法改正など、本来なすべき勤務条件・教育条件整備に徹するべきである。

 北教組は、「わかる授業・たのしい学校」「差別・選別の学校から共生・共学の学校」をめざし、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「ゆたかな教育」の実現のため、一人ひとりの子どもによりそう教育実践を積み重ねるとともに、教育を市民の手にとりもどすための広範な道民運動をすすめていくことを表明する。

  2018年8月3日

                                    北海道教職員組合