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 文科省は7月31日、19年度「全国学力・学習状況調査」の結果を公表した。今年度の調査(小6・中3を対象とした悉皆調査)は、新たに中3で「英語」を加えるとともに、「知識と活用を一体的に問う」とし、これまでのA問題・B問題の構成を見直して実施した。文科省は、全国の状況について、「上位と下位の差はおおむね1問程度で、平均正答率プラスマイナス10%の範囲内」「前年同様、下位の底上げ傾向は続いている」などと分析した。

 今年度は、問題構成を変更しこれまでと異なる調査であるにもかかわらず、過去の数値との比較に終始しており、分析は公平性・妥当性を欠くものである。また、調査は「知識偏重からの脱却」をめざすとして改訂「学習指導要領」の内容を前倒しする内容となっており、分析も改訂内容に合わせて国の求める「資質・能力」の育成に誘導し、本来あるべきゆたかな学びをめざすものとなっていない。

 初めて実施した「英語」については、「話すこと」の調査において「録音環境の設置・確認など事前に膨大な作業を要した」「一度に調査できる人数が限られるため、生徒の入れ替えや試験監督に教職員を多数配置せざるを得なかった」など現場での多大な負担増が報告されるとともに、「隣席の声が漏れていた」「機材の不備によって録音されていなかった」など調査の信頼性を揺るがす事態が生じた。また、「英語」の結果は、外国人や英会話教室などが多い都市部が好成績となるなど、現場の努力だけでは解決できない問題が露呈しているにもかかわらず、分析はこうしたことに何ら踏み込むものとなっていない。

 道教委も同日、例年同様に「正答数」や「正答率」「無回答率」などについて全国との数値比較に終始する「全国学力・学習状況調査の結果のポイントについて」を公表した。また、「全国との差が最大で小学校-2.1ポイント・中学校-1.8ポイントで、すべての教科で全国平均に届いていない」「全国との平均正答率の差はこれまでと同様であり、十分に改善されていない」と数値のみに拘泥し、何ら子どもの実態を表したものとなっておらず、現場の努力を顧みないコメントを行った。また、こうした問題ある分析の上に立って「継続的な検証改善サイクルの確立」「主体的に学習に取り組む態度を養う授業改善」「家庭や地域と連携した望ましい学習習慣・生活習慣の定着に向けた取組」などを「更に進める」とした。

 今、学校現場では、道教委による管理強化のもと「家庭学習提出100%」「チャレンジテスト解答率100%」など子どもたちを追い込む方策が矢継ぎ早に強要されている。教職員も、調査直後の自校採点・報告・検証をはじめ、日々「宿題」「過去問題」などテスト対策に膨大な時間を割かれ、自主的な教材研究や授業準備が十分に行えずに苦しんでいる。

 道教委の「点数至上主義」のこれまでの施策は、子どもの「学び」への思いや願いを置き去りにし、地域の実態を顧みない押しつけに過ぎず、むしろ子どもの学びを阻害している。また、教職員は長期休業中に強制的な集合研修が多数課せられており、その上に本結果をもとにした「夏休み中の結果分析と対策の構築」「休み明けからの改善方策の実施」を求めることは、道教委がすすめようとしている教職員の超勤・多忙化解消策にまったく逆行し、学校現場を一層追い詰めるものであり、断じて容認できない。

 道教委は、「全国学力調査・結果公表」とそれにもとづく「点数学力向上策」の押しつけを即刻中止し、各学校の自主的・創造的な教育活動と一人ひとりの子どもによりそう実践を保障するとともに、「子どもの貧困」解消と「教育格差」是正をすすめ、定数改善や「給特法」の廃止・見直し等、超勤・多忙化解消のための法改正を文科省に求めるなど、本来なすべき勤務条件・教育条件整備に徹するべきである。

 北教組は今後も、子どものゆたかな学びを阻害する「全国学力調査」に断固反対し、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「わかる授業・たのしい学校」「差別・選別の学校から共生・共学の学校」をめざして、「主権者教育」を基盤とした教育実践を積み重ねるとともに、教育を市民の手にとりもどすための広範な道民運動をすすめていくことを表明する。
  2019年8月2日

                                      北海道教職員組合