■■ 北海道教職員組合【北教組】へようこそ

ページトップへ戻る

 岸田政権は12月16日、「安全保障3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)」の改定を閣議決定した。「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有に踏み込むとともに軍事大国化や米軍との一体化を一層加速させるなど、憲法9条を蔑ろにして「戦争をできる国」に突き進もうとすることは、断じて容認できない。また、専守防衛の原則にもとづく戦後日本の安全保障政策の大転換であるにもかかわらず、国会での議論を経ずに閣議決定で行うことは、暴挙以外の何ものでもない。岸田政権によるこの閣議決定に対し強く抗議する。

 これまで政府は、性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のために用いられる「攻撃的兵器」の保有は「いかなる場合にも許されない」とし、日米安保条約の下、敵地攻撃は米軍に依存し、自衛隊は防御に徹するとしてきた。しかし、今回の「国家安全保障戦略」では、外国領域を直接攻撃する能力を持つと宣言し「反撃能力」の保有を明記した。日米による共同対処が前提となる「反撃能力」の保有により、米軍との一体化がさらに加速することは避けられない。政府は、専守防衛に徹する方針は今後も変わらないとする一方で、相手が攻撃に「着手」すれば憲法上反撃できると説明している。しかし、判断を誤れば憲法・国際法に違反する先制攻撃となりかねない。
 また、「国家安全保障戦略」は、中国について「これまでにない最大の戦略的な挑戦」、北朝鮮について「一層重大かつ差し迫った脅威」、ロシアについて「安全保障上の強い懸念」と表現を改めた。軍事力強化により米国とともに対中などの抑止をめざす政府の姿勢は、緊張を高める行為と言わざるを得ない。
 さらには、2027年度に防衛費と関連経費を合わせた予算水準を現在の国民総生産の(GDP)比2%まで増額する方針も掲げた。これにより防衛費は23~27年度の5年間で43兆円程度となり、世界からは軍事大国化ととらえられかねない。

 安全保障の目的は、国民を守ることにあり、国家の役割は、国民生活を脅かす衝突や危機を防ぎ戦争を回避することにある。「安全保障3文書」は、防衛力を強化すれば、相手に侵攻を思いとどまらせることができると強調している。しかし、軍事力増強で日本の平和と安全を守れる確証はない。軍事力の強化は、抑止力にはつながるどころか、互いの疑心暗鬼を招き、かえって他国の軍拡を招くなど際限のない軍拡競争に陥る懸念すらある。
 日本は、平和国家という政治的価値観を損なうことのないよう、武力によらない安全保障を確保する姿勢を示し、意思疎通や対話を通じて緊張状態を回避し、地域の安定をはかるべきである。また、平和憲法を持つ日本は、文化的交流・平和国家という政治的価値観・外交政策を最大限に活かして平和を守っていくとともに、率先して軍拡競争に歯止めをかけ世界平和に寄与していくべきである。

 私たちは、「教え子を再び戦場に送らない」のスローガンのもと、憲法の理念を護るため、平和を望む多くの広範な市民と連帯し、今後もあらゆる戦争につながる動きを断固阻止するよう、組合員の総力を結集して全力でたたかう。

 2022年12月19日

北海道教職員組合