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 道教委は11月2日、2022年度「全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書」を公表した。その中で、「小学校のすべての教科で全国平均との差が縮まるとともに、小学校理科、中学校国語と理科の3教科で全国平均とほぼ同水準となるなどの改善傾向が見られる」とした。一方で、「すべての教科で全国平均に届いていない」「自分の考えをもち、筋道を立てて説明することなどに課題が見られる」「授業以外で勉強する時間が短い」などとし、「組織的な授業改善」「望ましい学習・生活習慣の定着」など、昨年度とほぼ同様の「分析」を行った。

 「本道の状況」では、1人1台端末と各教科の平均正答率の関連について、①「ほぼ毎日」使用させたと回答した学校ほど高い傾向にある、②持ち帰って家庭で利用できるようにしている学校は、持ち帰らせていない学校に比べて高い傾向にある、などICT機器の活用による成果を強調する分析を行っている。また、「PDCAサイクルや組織的な取組に関連する質問に肯定的に回答した学校ほど各教科の平均正答率が高い傾向にある」として、自らがすすめる「検証改善サイクルの確立」を正当化した。

地域差が拡大し、人口の少ない町村部の平均正答率が低かったことに対しては、「学習塾との連携」など学校外での学習に言及するとともに、公営塾を開設している市町村のように他市町村にも、「地域全体で学習支援する」自助努力を求めるなど、「塾がない地域」「経済的理由により塾に通えない子ども」などを一切顧みず、公教育の役割を没却する無責任な提言を行っており、断じて容認できない。

 北教組の調査では、北海道の小中学校において、「過去問や道教委提供の『チャレンジテスト』による事前対策が『当たり前』となってきていることが負担」といった実態が明らかになっている。毎年「全国上位」とされる石川県について、4月は事前対策に追われ、「1~5時限すべて過去問を解いている学校もある」「教職員の負担やプレッシャーが大きく、子どもと向き合う時間が減少している」などの様子があらゆるメディアで報じられている。

 文科省・道教委も「調査により測定できるのは学力の特定の一部分」としながら、23年度から27年度「北海道教育推進計画 素案」において、「小中学校の国語、算数・数学の平均正答率が全国以上の教科数」を「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」の指標として「目標値」を設定しようとしている。現状においても、到達目標に達成できない子どもは差別・選別されており、点数学力偏重の学校になじめず不登校となる子どもも一向に減少していない。また、教職員も、11月に結果公表がなされるにもかかわらず調査実施後に解答用紙をコピーし、直ちに自校で採点・分析後、授業改善が命じられるなど、調査に翻弄され超勤・多忙化は一向に解消されていない。「序列化や過度な競争が生じないよう配慮を」と報道機関に要請する道教委が、管内の平均をグラフ化し、市町村別の結果を公表することで、「他管内・他市町村には負けられない」とした競争を生じさせている。また、地域間格差が生じる根本的な要因を分析することなく、「検証改善サイクルの確立」「授業改善」「小中学校の連携した取組の充実」「望ましい学習習慣の確立」「ICT機器の活用」のみを「改善策」として画一的な教育を押しつけている。

 「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題の検証・改善に役立てる」目的なのであれば、隔年調査や抽出調査でも十分である。過去問やチャレンジテストによる事前対策を事実上「強制」し、全道に画一的な授業改善を指示する教育施策が本当に子どものゆたかな学びにつながっているのか、今一度問い直すべきである。子どもが夢や希望を持ち、自分で考え行動する力を身につけられるためには、どういった教育が必要なのか明確な理念とビジョンを持ち、地域や子どもの実態に応じたカリキュラム編成を達成することこそが求められている。

 直ちに道教委がすべきことは、膨大な時間・費用・労力をかけて変わり映えのしない分析を毎年くり返す硬直した姿勢の改善であり、不登校やいじめ、ストレスなど現実の子どもの苦悩に向き合うことである。地域や子どもの実態に即しゆたかな教育を保障するため、押しつけの「学力向上策」を止め、①少人数学級の実現や就学援助など教育予算の拡充、②教育課程の弾力化や学校の裁量権の保障、③教職員の持ち授業時間数を減らすため定数を改善したうえで、子ども一人ひとりとゆとりを持って接する時間の保障、など教育条件の整備・拡充と教職員の超勤・多忙化解消に全力でとりくむことを求める。

 北教組は、「報告書」「結果公表」に断固抗議するとともに「全国学力・学習状況調査」に反対し、子どもたちの「学び」を矮小化する「点数学力」偏重の「教育施策」の撤回を強く求める。

 私たちは今後も、憲法・「47教育基本法」・「子どもの権利条約」の理念にもとづく「ゆたかな教育」の実現のため、「主権者への学び」をすべての教育活動の底流とした教育実践を積み重ね、市民とともに教育を子どもたちのもとへとりもどすための広範な道民運動をすすめていくことを表明する。

 2022年11月2日

北海道教職員組合